河出書房新社は7月7日、ブラジルの作家クラリッセ・リスペクトルの小説『星の時』を河出文庫から刊行する。

孤独なタイピストを描く、20世紀文学の名作
リスペクトルは1920年、ロシア内戦下のウクライナに生まれ、幼少期にブラジルへ渡った。1944年に発表したデビュー作でグラッサ・アラーニャ賞を受賞。欧米での16年間の生活を経てブラジルに帰国し、1977年に57歳で死去した。
死後、その評価はいっそう高まった。「ブラジルのヴァージニア・ウルフ」と評され、作家オルハン・パムクからは「20世紀のもっとも謎めいた作家のひとり」とも称された。フランツ・カフカやフェルナンド・ペソアらと並ぶ、20世紀文学の巨匠として知られる。
『星の時』は、作家が晩年に残した代表作として読み継がれている。地方からリオデジャネイロのスラム街に出てきた、天涯孤独のタイピストの姿を通して、貧しさ、孤独、語ることの不確かさが描かれる。
文庫化にあたり、訳者の福嶋伸洋氏が訳文を全面的に見直したほか、リスペクトルの息子によるエッセイと、文筆家・水上文氏による解説を新たに収録。仕様は文庫判176ページ、税込定価990円である。なお、電子書籍は8月に発売される予定だ。
原作映画「星の時 4K」も8月に公開
『星の時』を原作とした映画「星の時 4K」も、8月21日から全国で順次公開される。
1985年にブラジルで製作され、同年にブラジリア映画祭では最優秀作品賞ほか5部門を受賞した。1986年のベルリン国際映画祭で銀熊賞に輝いた。1986年のアカデミー賞外国語映画賞では、ブラジル代表作品として選出されている。
40年の時を経て4Kとして美しく甦った本作は、「ブラジル映画史上ベスト100」、英国BFIによる「The female gaze:女性監督による、見過ごされてきた100本の映画」にも選出され、近年においても評価が広がり続けている。

