株式会社KADOKAWAは、夢野久作の長編小説『ドグラ・マグラ』の特装版を11月30日に刊行する。発売に先立ち、公式オンラインショップ「カドスト」および一般書店にて予約受付を開始した。

一世紀近く読者を惑わせてきた奇書
『ドグラ・マグラ』は、怪奇・幻想小説で知られる夢野久作の代表作である。
精神に異常をきたした「私」の記憶を軸に、現実と妄想、生者と死者の境界が崩れていく物語だ。
禅僧、農園主、新聞記者など多彩な経歴を経て作家となった夢野が、構想十年をかけて完成させ、1935年に刊行した。
日本文学のなかでも特異な位置を占める作品として語り継がれ、多くの読書家や研究者を魅了してきた。刊行から長い時間を経てもなお、多様な解釈を生み続けている。
装丁が物語へと誘う特装版
特装版は、装丁を芦澤泰偉と明石すみれ、装画を彫り師のSAKURAが手がける。
芦澤は、文庫や新書を含めて一万冊に及ぶ書籍を手がけてきた装幀家である。今回は函装と箔押しを施した造本となり、判型は四六判、頁数は696頁。定価は6,930円(本体6,300円+税)である。
特典として、佐藤究、澤村伊智、朝宮運河によるエッセイと、国文学者・鈴木優作の解説を収めた小冊子が付属する。初版限定で、角川文庫版の書影をかたどったステッカーも添えられる。
読むだけでなく、飾りたい一冊
同特装版の収録内容は、長く読み継がれてきた角川文庫版『ドグラ・マグラ』(上・下)と同一である。
既存の文庫版と異なるのは、造本の存在感だ。彫り師による緻密な装画、箔押しを施した函装は、奇書として知られる物語を、一冊のオブジェとして差し出す。
文庫で読む体験とは別に、所有し、眺め、書架に飾る楽しみもある。愛書家にとって、物語の迷宮を手元に置くための特装版だといえる。


