ネットや書店で「⚪︎⚪︎賞受賞作!」などのポップを見かけることはあっても、それぞれの文学賞について詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。
日本には数多くの文学賞が存在し、作家や作品の知名度を大きく押し上げる役割を果たしています。本コラムでは、代表的な日本の文学賞4つを取り上げ、その概要や選考方法、注目の受賞作をわかりやすく紹介します。
芥川龍之介賞(通称:芥川賞)
『羅生門』などで知られる小説家・芥川龍之介の業績を記念して1935年に創設された純文学系の新人賞で、文藝春秋社内の日本文学振興会が主催します。
主に文芸誌などに掲載された短編・中編小説を対象とし、単行本化前の無名または新進作家の登竜門として知られています。年2回(上半期・下半期)選考が行われ、受賞作は『文藝春秋』に掲載されます。
選考・授賞
日本文学振興会によって選考・授賞され、年2回(上半期・下半期)行われます。
過去の受賞作

平野啓一郎『日蝕』
(第120回・1998年下半期)

宇佐見りん『推し、燃ゆ』
(第164回・2020年下半期)
直木三十五賞(通称:直木賞)
『南国太平記』などで知られる小説家・直木三十五の業績を記念し、1935年に芥川賞とともに創設された文学賞です。
エンタメ性や読みやすさを重視した大衆文学の中堅・実力派作家が主な対象とされます。創設当初は新人向けとされていましたが、現在ではキャリアを積んだ作家の受賞が主流となっています。
選考・授賞
年2回、日本文学振興会によって選考が行われ、受賞者には懐中時計と副賞100万円が贈られます。選考会は料亭「新喜楽」で実施され、発表後には記者会見と授賞式が行われます。
過去の受賞作

東野圭吾『容疑者Xの献身』
(134回・2005年下半期)

河﨑秋子『ともぐい』
(170回・2023年下半期)
江戸川乱歩賞(通称:乱歩賞)
江戸川乱歩の寄付をもとに1955年に創設された長編推理小説を対象とする文学賞で、日本推理作家協会が主催しています。ミステリー作家を目指す多くの新人にとって登竜門として知られています。
選考・授賞
広く公募され、優れた長編推理小説に贈られる賞です。正賞として江戸川乱歩像、副賞として500万円が授与され、受賞作は講談社から出版されるほか、映像化されることもあります。
第68回からは贈呈式が一般公開されるようになり、透明性の高い選考と受賞者の広報支援によって、新人作家が世に出る大きなチャンスとなっています。
過去の受賞作

下村敦史『闇に香る嘘』
(第60回・2014年度)

荒木あかね『此の世の果ての殺人』
(第68回・2022年度)
本屋大賞
本屋大賞は2004年に創設された文学賞で、全国の書店員が「いちばん売りたい本」に投票して選ぶという、従来の文学賞とは一線を画すユニークな形式で知られています。主催はNPO法人・本屋大賞実行委員会で、読者との距離が近い書店員が選ぶという視点が特徴です。
選考・受賞
選考は年に1度行われ、まず全国の書店員による1次投票で上位10作品がノミネートされます。その後、ノミネート作をすべて読了したうえで、再び書店員による2次投票が行われ、大賞が決定されます。
受賞作品はしばしば映像化され、大きな話題と売上を生むなど、商業的にも大きな影響を与えています。
過去の受賞作

小川洋子『博士の愛した数式』
(第1回-1位・2004年)

逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』
(第19回-1位・2022年)
まとめ
文学賞は作品のクオリティや読者への届け方を支える重要な仕組みです。芥川賞や直木賞のような伝統ある賞から、本屋大賞のように読者目線に近い賞まで、それぞれの文学賞には独自の個性と魅力があります。
文学賞を通じて、今の小説界のトレンドや注目されるテーマが見えてくるため、定期的にチェックすることで読書の楽しみが広がります。
ぜひ受賞作を手にとって、新たなお気に入りの一冊を見つけてください。