新潮社は、桐野夏生の最新長編小説『ダークネス』を2025年7月30日に刊行した。本作は、1993年のデビュー作『顔に降りかかる雨』以来、多くの読者を魅了してきた“村野ミロ・シリーズ”の最終章にあたる。
衝撃作『ダーク』から20年、沈黙を破り、再び主人公・ミロが読者の前に姿を現した。

物語は、コロナ下の那覇から始まる。ミロは息子・ハルオとともに静かに暮らしていたが、ある出会いをきっかけに過去の因縁が再び動き出す。宿敵・久恵や山岸がふたたび彼女の人生に影を落とし、息子のハルオも自身の出生を知り、“悪”を知る旅に出てしまう。息子を取り戻すため、60歳のミロが最後の闘いに身を投じる姿が描かれる。
本作は、文芸誌「yomyom」で連載されていた作品をベースに、加筆修正を加えた単行本。著者は「これを書くまで死ねないと思っていました」と語るほどの入魂作であり、読者にとっても特別な一冊となる。
桐野夏生はこれまで『OUT』『柔らかな頬』『グロテスク』『魂萌え!』『東京島』『燕は戻ってこない』などで数々の文学賞を受賞し、現代社会の暗部を鋭く抉る筆致で高く評価されてきた。『ダークネス』は、その集大成とも言える渾身の一作だ。
四六判変形、税込2750円。紙書籍に加えて電子版も同時発売されている。
■出店