なぜ、その「嘘」は真実よりも美しいのか? 伊坂と湊が仕掛ける極上の読書体験

ニュース

双葉社は2月6日、2026年本屋大賞のノミネート作に、伊坂幸太郎『さよならジャバウォック』と湊かなえ『暁星』が選出されたと発表した。

世界が反転する驚き――伊坂幸太郎の構造的快楽

『さよならジャバウォック』は、デビュー25周年を迎えた伊坂幸太郎の書き下ろし長編だ。

ルイス・キャロルの怪物を想起させるタイトルだが、本作が提示するのは文学的想像力の臨界点である。「量子」と「斗真」という二つの視点が並走する構造のなかで、夫を殺害した佐藤量子の告白が展開される。

突如現れた桂凍朗による不可解な提案、積み重ねられる謎。そして終盤、世界が反転するかのような真相の開示は、すべての伏線を氷解させる。

伊坂自身が「『そうだったのか!』と驚いてほしい」と語るように、読者は作者との知的なゲームに参加する感覚を味わえる。精緻に計算された文章の背後に、人間の認識の脆さという哲学的テーマが潜んでいる。

虚実の境界で問われる真実――湊かなえの到達点

湊かなえ『暁星』が提示するのは、虚実の境界に立つことの困難さだ。

現役文部科学大臣にして文壇の大御所が刺殺されるという衝撃的な事件を軸に、加害者の手記と目撃者による小説という二つの視点が交錯する。

ノンフィクションとフィクション、事実と想像。その境界線は次第に曖昧となり、読者は「真実とは何か」という根源的な問いに直面する。

語り手によって変容する「主観的な真実」の危うさと美しさに触れることになる。作者が「これまでの作品で一番好き」と語る本作は、17年のキャリアを経て到達した境地である。

本屋大賞が照らす、読書の本質

両作品に共通するのは、娯楽性と文学性の高次の融合である。

謎が解ける快感の先にある、人間存在への深い洞察。言葉の選び方ひとつに作家の世界観が宿り、それを読み解く行為そのものが、自分自身の内面と対峙する時間となるだろう。

■出典
株式会社双葉社のプレスリリース

タイトルとURLをコピーしました