第174回芥川賞に、鳥山まこと『時の家』が選ばれ、発行元の株式会社講談社は1月15日、著者のコメントなどを発表した。
『時の家』は、「群像」2025年8月号に掲載された時点から完成度の高さが話題を呼び、第47回野間文芸新人賞を受賞した。同一作品が野間文芸新人賞と芥川賞の両方を受賞するのは、史上初の快挙である。

あらすじ
本作は、一軒の家に暮らした三代の住人たちの記憶を紡ぐ物語である。青年が家の床、柱、天井、タイル、壁――そこに刻まれた記憶を、ひとつひとつ描きとめていく。
著者の鳥山まことは、1992年兵庫県宝塚市生まれ。2023年に「あるもの」で第29回三田文學新人賞を受賞し、小説家としてデビューした。本業は建築士であり、『時の家』が初の単行本となる。
建築の現場で培われた眼差しが、家屋の緻密な描写を支えている。建築物の物質的な存在感と、そこに堆積した人間の営みとが幾重にも重なり合う筆致は圧巻だ。
著者は、
家に染み込む微かな揺れの記憶を、街に残る大きな揺れの記憶を、思い出すように
(プレスリリースより)
想像したと語っている。家の声に耳をすませる全ての住まい手に届く言葉がここにある。
いしいしんじも絶賛の声を寄せた。
大切に建てられた一軒の家に、ひとの気配がやどる。
流れる時のすきまから、あまたの声がもれだしてくる。
いつかまた、この本のなかに帰ってこようと思った。
(プレスリリースより)
読者からは「家という存在に真正面から向き合った小説」「漆喰のように塗り重ねながら記憶が吐き出されていくようだった」などの評が寄せられている。
わずか139ページという分量でありながら、「一文でも読み飛ばしてしまえば、物語に置いていかれてしまう」ほどの濃密さを持つという感想も印象的だ。
単行本は講談社より2025年10月23日に刊行済み。四六判上製、144ページ、税込2,090円。


