河出書房新社は12月19日、ハン・ガンの受賞後初の作品『光と糸』(斎藤真理子訳)を刊行した。
この書の起点となるのは、著者が8歳のときに書いた詩である。最終ページにカラーで収録された詩の中で、幼い彼女は「愛とは何か」「それはどこにあるのか」と自らに問いかけていた。
その原風景へと遡るように、ハン・ガンは自身の創作の核心を問い直していく。

暴力と美から、愛という根源へ
「世界はなぜこれほど暴力的で、苦痛に満ちているのか」と「世界はなぜこれほど美しいのか」。この二つの問いこそが、執筆を駆動する力だと彼女は考えてきた。
しかし、古い靴箱から見つかった幼少期の詩に再会したことで、より根源的な問いが浮かび上がる。「愛ってどこにあるのか」「愛って何なのか」。この問いこそが、すべての作品の最も深い層に流れていたのではないか、と。
『光と糸』は、ノーベル文学賞受賞記念講演全文、創作エッセイ、5編の詩、庭の日記、自身による写真を、著者自らが一冊の「作品」として編集したものだ。単なる作品集ではなく、内面と思索の軌跡そのものが提示されている。
アジア人女性初のノーベル文学賞受賞という快挙ののちも、彼女は饒舌になることを選ばなかった。受賞後のインタビューでは「世界には多くの苦痛があり、私たちはもう少し静かにしていなくてはなりません」と述べ、韓国国内での記者会見も辞退している。
刊行に際して著者は、「最初から最後まで光のある本にしたかった」とコメントを寄せている。凄惨な現実を直視し、沈黙のうちに思索を深める彼女の文学的態度は、「光」という言葉に集約され、一冊の書籍として結晶化した。
書店フェアや雑誌特集も展開
12月下旬からはハン・ガン作品を刊行する日本の出版社7社が集結し、「日本語で読めるすべてのハン・ガンフェア」を全国展開する。開催書店では邦訳全作品チャートなどを掲載した特製リーフレットを配布する予定だ。
また、1月7日発売の「文藝 2026年春季号」では、特集「ハン・ガンを読む――傷と庭を抱いて」を掲載。翻訳者全員による座談会、注目のクリエイター陣による読書会など、読みごたえのある内容となっている。四六判変形、税込2200円。


