株式会社文藝春秋は11月3日、同社が刊行した金原ひとみの小説『YABUNONAKA―ヤブノナカ―』が、第79回毎日出版文化賞(文学・芸術部門)を受賞したと発表した。
同賞は1947年に創設され、優れた著作や出版活動を顕彰してきた権威ある文学賞である。

藪の中の深層は?現代社会の闇をえぐる衝撃の群像劇
本作は、性加害の告発が連鎖的に人間関係を揺るがしていく群像劇。
文芸誌「叢雲(むらくも)」元編集長・木戸悠介をはじめ、彼の息子、高校生の恵斗、編集部員の五松、そして作家・長岡友梨奈らが、SNSやMeToo運動など現代社会のうねりの中で翻弄されていく。
“わかりあえないこと”のその先に、果たして救いはあるのか。
著者史上最長となる原稿用紙1000枚に及ぶ圧巻の筆致で、性、権力、暴力、愛をめぐる人間の深層をえぐり出す。
金原ひとみが耳元で鳴らす「生き延びるための地図」
刊行時のコメントとして、「変わりゆく時代を共にサバイブしよう」と呼びかけた著者は、今回の受賞を受けて、
この小説は、誰かを排除するためでも、誰かを貶めるためでも、誰かを断罪するためでも、誰かを救済するためでもなく、時代に翻弄される私たちが生き延びていくための手掛かりになる、地図のようなものを作りたいという思いから始まりました
(プレスリリースより)
と語っている。
濁流のように変化する社会の無慈悲さに流されず、自他への嫌悪の中で立ち止まり、考え、顧み、想像し、検討する時間を提示する作品となった。
書評では、朝井リョウが「耳元で怒鳴ってくれる。ラッパー金原ひとみ!」と評し、山内マリコも「前時代にいた自分を断罪し、潔く殺す。圧巻の大長編」と絶賛。
社会の暗部と個の痛みを描き続けてきた金原ひとみの到達点ともいえる長編である。
装画は画家・岡村芳樹。四六判上製カバー装、税込2,420円。本作は2025年4月10日に発売された。

