柚木麻子の長編小説『BUTTER』(新潮文庫)が、英国の「The Bestseller Awards 2026」においてGold Awardを受賞した。
同賞はNielsenIQ BookDataが選定する、英国で最も販売実績のあった書籍に贈られるものだ。2024年2月の英国版刊行以来、すでに3冠を達成。世界38か国での翻訳が決定し、全世界累計150万部を超える社会現象となっている。授賞式は現地時間1月19日夜に行われた。

美食と欲望が暴く、現代社会の深層
『BUTTER』は、男たちの財産を奪い殺害した容疑で拘置所に収監された梶井真奈子と、彼女に接触を試みる記者・町田里佳の心理的交錯を中心とした物語である。
「フェミニストとマーガリンを許さない」と断言する梶井の強烈な個性が、里佳の人生や価値観、そして周囲の人々の運命までも変容させていく。
国境を越えて広く受容される背景には、単なる美食の描写を超えた切実な問いかけがある。男性優位社会への適応、ルッキズムの内面化、限界まで働き続ける生き方。これらの規範に絡め取られた日常に疲弊した身体が、いかにして自らを取り戻すのか。
梶井が語る“バターの芳醇な香り”は、効率性や生産性を重んじる現代社会において置き去りにされた、個人の内的な感覚を呼び覚ます。
著者の柚木麻子は、2008年のデビュー以来、『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞を受けるなど、現代を生きる人々の機微を鋭く、かつ詩的に描き続けてきた。本作『BUTTER』は、その観察眼が世界規模で共鳴した記念碑的一作といえるだろう。
文庫版(電子版もあり)1,045円(税込)で発売中。


