株式会社新潮社は、青柳碧人による長篇小説『乱歩と千畝 ─RAMPOとSEMPO─』を2025年5月14日に刊行する。日本の探偵小説の巨匠・江戸川乱歩と、「命のビザ」で知られる外交官・杉原千畝。この“異色の組み合わせ”に着目し、著者が大胆な創作で描く「友情」と「青春」の物語だ。

物語の始まりは、早稲田界隈のカツ丼店「三朝庵」。古本屋のかたわら夜は屋台を引く青年・平井太郎(乱歩)と、洋書を片手に食事をする学生・杉原千畝が偶然出会う。実は二人は高校(旧制愛知五中)と大学(早稲田大学)の先輩後輩という間柄で、史実上も接点の可能性があるという。
まだ無名だった二人が語り合い、時に励まし合いながら夢を抱いてそれぞれの道を歩んでいく姿は、時代を超えて心に響く。やがて彼らの前には、若き横溝正史や外交官・松岡洋右も登場し、激動の昭和史を背景に物語はドラマチックな展開を迎える。
作中では、推理小説界の巨匠たちも顔をそろえる終盤の展開に胸が熱くなり、青春小説としても、友情の記録としても読み応えたっぷりだ。推薦コメントを寄せた直木賞作家・門井慶喜氏は「読後の印象ののびやかさ、ふところの広さは格別」と絶賛。
装画は、独特の耽美な世界観で知られる漫画家・鳩山郁子氏による描き下ろし。物語世界と響き合うビジュアルが本書を一層引き立てる。
史実と想像を巧みに織り交ぜたこの作品は、文学ファンはもちろん、歴史小説ファンにも強くおすすめしたい一冊だ。